今更ながら、SIGMA sd Quattroを買ってしまった。目的としては、α1より気軽に持ち出せて、RX100M3より画質がいいカメラが欲しいというものである。それでなぜsd Quattroなのかといわれれば、なかなかナゾであるが、既に生産終了し中古価格が高騰しているFoveon機を今のうちに確保しておこうという思考が働いたのは事実である。
sd Quattroは、Foveon X3 QuattroのAPS-Cセンサーを搭載した、SAマウントのミラーレス一眼である。同時期にsd Quattro HというAPS-Hのモデルがあるが、こちらはより中古価格が高いどころか、最早中古で売っているのを探す方が大変であるため、比較的手に入りやすいsd Quattroを選択。
今回は、SIGMA 30mm F1.4 DC HSM Artのセットで、メルカリで11万円のものを購入。一時期はこの半値で買えたと思うのだが、生産終了してから再注目され、中古価格が高騰している。レンズ固定式のdp Quattroシリーズも10万円近い価格で中古品が取引されている。私は、7年ほど前に中古でdp0 Quattroを買ったのだが、当時は5万円以下で買ったものだったが、今や新品価格以上の値段で中古品が取引されているのだから驚きだ。現役当時はあまり売れている印象はなかったので、そもそも弾数が少ない。正直sd Quattroも少しコスパは悪いように思うが、近年全体的に中古カメラの価格が上がっているので、レンズ込みでFoveonで11万円なら妥当かなと。
購入にあたり、考えたのはα6000とSIGMA 30mm F1.4 DC DN や、オリンパス OM-D E-M1とM.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROなどの比較的コンパクトなカメラとレンズの組み合わせを考えたが、やはり10万円程度は避けられようにない。近年新品価格が高騰している中で、かつて安く売っていたカメラの中古品がより売れるようになり、安かったはずの中古カメラも高騰しているような状況に思える。今のカメラは全般的に高い。ならばいっそFoveonを買ってしまおうという算段だ。
当初個人的にはsd Quattroには懐疑的だった。それは、1:1:1じゃないからという昔からのFoveonユーザー的意見ではなく、dp0 Quattroの様にカメラに専用設計で、光軸もバッチリ調整されたレンズと組み合わせることで、Foveonの高い解像度を行かせるのではないかと考え、レンズ交換式ではFoveonセンサーの性能を100%活かせないのではないかと思ったからだ。しかし、いまやdp2 Quattroも10万円近い価格であり、値段に差はない上、レンズ交換式なのは今後の可能性だと考え、今回sd Quattroを購入した。ただ、近年SAマウントのレンズが市場から姿を消しつつあり、レンズの入手性はすこぶる悪い。本カメラを使用している人は、SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Artを使用している例が多く、自分もいつか欲しいと思っているところ、最早中古でSAマウントのものは中々見つからない。幸いマウント交換サービス対応のレンズのため、他マウントのものを買ってSAマウントにする手もあるが...。
まあそれはいいとして、早速ながら1日旅行に使ってきたので、レビューしたい。
まず特徴的なのはその見た目だろう。他のカメラでは見られない異様なデザインだ。ボディ底部は謎に切りかけられているし、SAマウントが故フランジバックを稼ぐためマウント部分が飛び出ている。しかし、デザインとしては現在のfpにまで至るSGVに切り替わってからのデザインであり、金属製の筐体は剛性感も高く、高級感や道具としての心地良さを感じる質感である。そして、案外グリップも握りやすく、男性の私でも小指が余るということは無い。グリップ前後にダイヤルが配されている。dp Quattroと同じデザインのものだ。フロントダイヤルがやや硬いため、ローレット加工で指が擦れそうになるのが残念。そして、中央上部に飛び出たEVFも、デザインとしては異様ではあるが、画面に鼻がつかず、画面が脂でギラつくこともない。EVFとしての性能は、α等と比べればイマイチではあるが、RX100M3よりは見やすいし、世間で酷評されるほど見にくくもない。
液晶は固定式で、メインモニターとその右脇にサブモニターがある。サブモニターは、白抜きの文字で、シャッタースピードやF値、ISO感度やバッテリー残量など撮影に必要な情報が表示され、中々みやすくで何よりかっこいい。個人的にdpではなくsdを買った理由はこのサブモニターがかっこいいというのもあった。実際そこそこ見やすく、あればあったで便利なものだ。
液晶も滑らかで綺麗だ。EVFと違ってあまり不評も見られない。当然2016年発売なりのクオリティではあるが、ここは非常に満足しているポイントだ。
ボタン類は普通だが、ファンクションボタンがほぼない。サブモニター脇に、小さくISO感度ボタンなどはあるが、ファンクションボタンとして自由に割り当てられるボタンはないようだ。一方で、QSボタンがフロントダイヤル後部にあり、これを押すと、メニュー画面上で8つまで設定できる項目を操作することが出来る。個人的には、カラーモードとISO感度とアスペクト比をdp0 Quattroでは操作することが多かったため、これら3つを割り当てつつ、残りは適当に使いそうなものをセットしておく。
AFは9点のうち任意の1点を選択する方式か、自由に1点を選ぶ方式の2種類あるが、ジョイスティックもなく十字キーの操作のため、じっくり風景を撮る訳ではなければ、9点から選ぶ方がすばやく撮れてよい。なお、AF速度は当然早くは無いものの、最新のファームウェアでは遅くて不便と言うほど遅くはなく、dp0 Quattroと同等の速度になっている。およそ0.5秒ほどフォーカスが前後しながらピントが合う。少し待たされる感はあるが、実用的には問題ないレベルだ。なお、AFモードにはAF-SとAF-Cがあるが、後者の性能は当てにならないため、基本的にはAF-Sでの使用になるだろう。AF-Cを使う場面が思いつかない。
シャッター音は割と大きめ。しっかり撮っている感のある演出と言えば聞こえは良いが、静かなところで撮るには目立つだろう。まあそれはメカシャッター共通の話。このシャッターが厄介で、シャッター幕からダストを撒き散らし、カメラ内部の要因によるセンサーダストの原因になるらしい。sd Quattro Hでは対策されたというものの、相変わらずセンサーダストに関わる批判は多いようだ。なお、センサーの前に赤外線フィルターを兼ねたダストフィルターが存在するため、ブロワーでセンサーダストを飛ばそうにも、これを外さなければならない。が、割ったり汚したりするリスクもあるため、細かい作業に自信がなければSIGMAで無料でセンサークリーニングをしてくれるようなので、ある程度汚れたらサポートに相談するのがいいだろう。
さて、肝心の写りであるが、解像度は申し分ない。レンズもArtライン初期で比較的コンパクトな30mm F1.4ではあるが、写りは十分シャープだ。カラーモードも楽しい。fpで話題となったティールアンドオレンジもあり、ついつい多用してしまう。だが、近年は5000万画素を超えるカメラが増えてきており、素人目には単純な解像度としてはFoveonの優位性は失われているように思う。これは技術の進化によるもので、仕方のないことだ。如何せん8年前のカメラで、8年も空けば技術は大きく進歩する。だが、正直dp0 Quattroの方が線のシャープな感じはあると思いつつ、ここはやはりレンズの差だろう。 それでも、十分以上な解像度を持つ。8年前のカメラで、現行の6100万画素等の高画素機に匹敵できるのは凄いことだ。
T&Oで撮影した作例。冬の寒々しい景色に意外とマッチする気がする。
また、バッテリー持ちについては、良くはないものの、短いスパンでシャッターを切れるカメラでもないため、思ったよりは持ったが、それでも朝から夕方まで撮るならバッテリーは4つは必要かと思う。
結論としては、前評判として聞いていたほどAFのレスポンスも悪くはなく、Foveonらしい解像感と、様々なカラーモード、大きすぎないサイズ感で、じっくり写真を撮るのに楽しいカメラだと思う。メイン機はα1だとして、サブ機として使い倒して行きたい。